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Zeimu · 税務

収益物件を売却した年の確定申告|必要書類と注意点【福岡】

この記事の要点
  • 収益物件を売却した年の確定申告とは、売却の翌年2月16日から3月15日までに、売却益の譲渡所得(分離課税)と、引渡し日までの家賃による不動産所得を、同じ確定申告の中でまとめて申告する手続きです。
  • 固定資産税・都市計画税の精算金は、税金の払い戻しではなく売却代金の一部として扱います。修繕費や固定資産税は譲渡費用になりません。
  • 売却した年の建物の償却費は、取得費の側に残すか、その年の不動産所得の必要経費に入れるかを選べます。どちらにするかで二つの所得の金額が入れ替わります。
  • 投資用の物件で出た売却損は、給与や家賃の所得と相殺できません。賃貸をやめる場合は、廃業の届出も確定申告期限までに済ませます。

アパートや一棟マンションを売った翌年の2月、手元には売買契約書と精算書、管理会社からの年間収支の報告が届きます。ところが、売却した年の確定申告は、家賃収入だけを申告していた年とは中身が違います。同じ1年の中に「持っていた期間」と「売った瞬間」が同居するため、お金の動きを二つの所得に振り分ける作業が加わるからです。以下では、振り分けの線引き、申告する年の決め方、売却年の減価償却、そろえる書類、提出と納付、そして翌年に届く住民税や予定納税までを順に整理します。本記事は一般的な情報提供であり、個別の税額の計算と申告は税理士にご確認ください。

収益物件を売却した年の確定申告とは

収益物件を売却した年の確定申告とは、売却の翌年2月16日から3月15日までに、譲渡所得と不動産所得の両方を同じ申告書で申告する手続きです。土地や建物を売った利益(譲渡所得)は、給与や家賃などの所得とは分けて税額を計算する分離課税です。一方で、1月1日から引渡し日までに受け取った家賃は、これまでどおり不動産所得として申告します。

書類の組み立ても決まっています。土地や建物の譲渡所得がある人は、確定申告書に加えて分離課税用の「申告書第三表」と「譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)【土地・建物用】」を作成し、他の所得と一緒に申告します。国税庁の確定申告書等作成コーナーで金額を入力すると、必要な付表や明細書も自動で作成されます。

翌年3月15日
申告と納付の期限(原則)
2つの所得
譲渡所得(分離課税)と不動産所得
1契約1枚
譲渡所得の内訳書の作り方

申告書を出す先は、物件の所在地ではなく、提出するときの納税地を所轄する税務署です。納税地は一般に住所地です。県外にお住まいで福岡市内の物件を売った方は、お住まいの地域の税務署へ提出することになります。

譲渡所得と不動産所得の振り分け

売却した年の申告で迷いやすいのは、決済の日に動いたお金がどちらの所得に入るかです。主な項目を次のように整理できます。

お金の動き 申告での扱い
売買代金(手付金・中間金・残金) 譲渡所得の収入金額(譲渡価額)
引渡し日から年末までの固定資産税・都市計画税に相当する精算金 譲渡価額に含める
仲介手数料・売主が負担した印紙税・借家人への立退料 譲渡費用
修繕費・固定資産税 譲渡費用にはならない(業務用資産の固定資産税は不動産所得の必要経費)
引渡し日までの家賃・共益費 不動産所得の収入(原則として契約で定めた支払日に計上)
入居者から預かっている敷金・保証金 預り金のため収入にならない(返還を要しないことが確定した分は収入)
売却した年の建物の償却費 取得費に含めたままにするか、不動産所得の必要経費に入れるかを選べる

固定資産税の精算金は売却代金の一部

売買契約で、引渡し日から年末までの期間に対応する固定資産税・都市計画税に相当する額を買主から受け取る取り決めをしている場合、その精算金は譲渡価額に含めて書きます。「払った税金が一部戻ってきた」と考えて不動産所得の経費から差し引くと、二つの所得の金額がずれます。

その一方で、売主として納めた固定資産税そのものは、賃貸に使っていた資産の租税として不動産所得の必要経費になります。納期が分かれている税については、各納期の開始日の年分や実際に納付した年分に計上する方法も示されています。売却した年の納付書と領収書は、精算書と一緒に保管しておきます。固定資産税が収支に与える影響そのものは、固定資産税・都市計画税が収益物件の収支に効く仕組みで整理しています。

家賃と敷金は精算書で確認する

家賃や共益費は、契約や慣習で支払日が決まっていればその支払日に収入として計上するのが原則です。月の途中で引き渡し、引渡し日以降の家賃を日割りで買主へ渡す取り決めをした場合は、精算書に記載された金額と、管理会社から届く最終月の送金明細を突き合わせてください。

敷金も同じ精算書に出てきます。入居者がいる建物を売ると、原則として賃貸人の地位は買主へ移り、敷金を返す義務も買主が引き継ぎます。預かっていた敷金を買主へ引き渡したのか、売買代金から差し引いたのかで精算書の見え方が変わります。敷金は本来は預り金なので、受け取っても収入にはなりません。代金から差し引いた場合に譲渡価額をどう書くかは、精算書を添えて税理士に確認してください。

税引後にいくら残るか、提携税理士と確認しながら試算します

売却代金から仲介手数料や残債を引き、翌年の税金を見込んだあとに手元へ何が残るのか。決済の前に一度、数字を並べておくと申告の準備も楽になります。無理におすすめすることはありません。ご相談は無料です。

売却後の手残りと税金を相談する

どの年の申告に入れるか|「譲渡の日」の決め方

売却がどの年の申告に入るかは、「譲渡の日」で決まります。譲渡の日は、原則として買主に物件を引き渡した日です。ただし、売買契約の効力発生の日(一般的には契約締結の日)に譲渡があったものとして申告することもできます。

この選択が意味を持つのは、年末に契約し、年明けに引き渡す場合です。12月に契約を結び、翌年1月に決済と引渡しをしたときは、契約した年と引き渡した年のどちらの申告に入れるかを選べます。どちらを選ぶかで、申告の時期だけでなく、長期か短期かの判定にも影響が出ることがあります。所有期間は譲渡した年の1月1日時点で数えるためです。取得から5年前後で売る場合の注意点は、一棟アパート売却の譲渡税|短期5年で税率が変わる注意点にまとめています。

内訳書に書く「引き渡した日」は、通常、登記に必要な書類などを買主に交付し、最終代金を受け取った日です。決済日と引渡し日が同じ日であれば迷いませんが、代金の一部が未収のまま年をまたぐときは、未収金の額と受取予定日も内訳書に書く欄があります。

なお、引渡し日を境に、家賃の帰属も変わります。引渡し日までが売主の不動産所得、それ以降は買主の収入です。譲渡の日を契約日で申告する場合でも、家賃の区切りは実際の引渡しで考えるため、二つの日付を混同しないようにしてください。

売却した年の減価償却と建物の取得費

建物の取得費は、購入代金などの合計額から、所有していた期間の減価償却費相当額を差し引いて求めます。賃貸に使っていた建物では、取得してから売るまでの毎年の減価償却費を合計した額を差し引きます。仮に一部の年で減価償却費を必要経費にしていなかったとしても、毎年の減価償却費を合計することに変わりはありません。過去の申告で償却を計上し忘れていても、取得費が大きく残るわけではない点に注意が必要です。

売却した年の償却費はどちらに入れるか

売却した年の、年初から譲渡の時までの償却費は、譲渡所得の計算上の取得費に含めないで、その年の不動産所得の必要経費に算入しても差し支えないとされています。

必要経費に入れれば、その年の不動産所得は小さくなり、そのぶん建物の取得費も小さくなって譲渡所得が大きくなります。入れなければ逆になります。不動産所得は他の所得と合わせて税率が決まる総合課税、譲渡所得は分離課税なので、どちらが有利かは他の所得の大きさによって変わります。建物などでは、事業税の所得計算の扱いが異なる場合もあります。事業的規模で賃貸をしていた方は、税理士と一緒に判断してください。

土地と建物をまとめて買っていた場合

償却費を計算するには、購入代金を土地と建物に分けておく必要があります。購入時の契約書に土地と建物の価額が書かれていればその価額で、書かれていなくても建物に課された消費税額が分かればそこから建物の価額を計算でき、どちらもなければ購入時の時価の割合で分けます。建物の標準的な建築価額表を使う方法も示されています。毎年の不動産所得の申告で使ってきた区分と、売却時の区分をそろえることが大切です。

必要書類と譲渡所得の内訳書

譲渡所得の内訳書は、一つの売買契約ごとに1枚ずつ作り、確定申告書と一緒に提出します。特例の適用を受ける場合は、そのために必要な書類を内訳書に添付します。記入は、契約書や領収書などに基づいて行うよう案内されています。内訳書の欄と、その数字を拾う書類の対応は次のとおりです。

内訳書で書くこと 拾う書類 手元にないとき
物件の所在地・面積・売却直前の利用状況(貸付用など) 売却時の売買契約書、登記事項証明書 法務局で登記事項証明書を取得できます
買主の住所・氏名、売買契約日、引き渡した日 売却時の売買契約書、決済時の精算書 仲介会社に控えを依頼します
譲渡価額(精算金を含む)、未収金の有無 売買契約書、精算書、入金の記録 通帳や送金明細で入金額を確かめます
購入先、購入年月日、土地と建物の購入価額 購入時の売買契約書、購入時の仲介手数料の領収書 相続で取得した物件は被相続人の購入時の書類を探します
建物の構造と償却費相当額 毎年の確定申告書の控え(減価償却の明細) 過去の申告を依頼していた税理士に確認します
譲渡費用(仲介手数料、印紙税、立退料など) 各支払いの領収書、印紙を貼った契約書 支払先に領収書の再発行を相談します

相続や贈与で引き継いだ物件は、被相続人や贈与者が買ったときの取得費と取得の時期を引き継ぎます。親の代から持っているアパートでは、購入時の契約書がどこにあるかを先に探しておくと、申告の直前に慌てずに済みます。相続税を納めた物件を一定の期間内に売った場合には、相続税額の一部を取得費に加算する特例もあり、「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」で加算額を計算します。

購入時の契約書が見つからない場合

取得費が分からない場合や、実際の取得費が売った金額の5パーセント相当額を下回る場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費にできます。たとえば、土地建物を3,000万円で売って取得費が不明なときは、150万円を取得費にできます。ただ、実際の取得費が分かればそちらのほうが大きい場合もあります。使う前に、購入時の通帳の記録、ローンの契約書、当時の仲介会社の控えなど、取得費を裏づけられる資料がないかを一度確認してください。取得費と譲渡所得の計算の基本は、不動産売却の譲渡所得税をやさしく解説で順を追って説明しています。

売却で損が出たときと、消費税の申告

売値が取得費と譲渡費用の合計を下回り、譲渡損失が出ることもあります。この損失は、同じ年に他の土地や建物を売って出た譲渡所得からは差し引けますが、それでも残った損失を、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。損益通算と翌年以後への繰越控除が認められているのは、一定の要件を満たす居住用財産の譲渡に限られます。

賃貸用の物件で出た売却損は、同じ年の家賃収入による不動産所得とも相殺できず、翌年以降に繰り越すこともできません。マイホームの売却で聞く「損失の繰越」は収益物件には使えないため、損が出る売却は、税金がかからない代わりに税の上での救済もない、と考えておく必要があります。同じ年に別の物件を売って利益が出る予定があるときは、売る順番と年をまたぐかどうかで結果が変わるため、契約の前に税理士へ相談してください。

消費税の課税事業者に当たる方は、もう一つの申告が加わります。住宅賃貸用や店舗賃貸用の建物を売った場合も消費税の課税対象になるためです。課税事業者かどうかの判定や土地と建物の按分は、収益物件の売却にかかる消費税を整理するで扱っています。

売却前の段階で、価格と申告の見通しを一緒に確認します

いくらで売れそうかが分かると、譲渡所得の見込みと、翌年に備える納税資金の目安が立ちます。物件の資料をもとに、価格の根拠と一緒にお伝えします。査定は無料で、しつこい営業はいたしません。

収益物件の売却価格を確認する

提出期限・納付と、翌年に届くもの

確定申告の期間は、原則としてその年の翌年2月16日から3月15日までで、申告と納付の期限はどちらも翌年3月15日です。2026年中に引き渡した物件であれば、2027年2月16日から3月15日までが申告期間になります。申告書を出したあと税務署から納付書が送られてくることはないため、振替納税、ダイレクト納付、インターネットバンキング、クレジットカード、コンビニなどの方法で、自分で納めます。

期限を過ぎた申告は期限後申告となり、申告内容によっては本来の税金のほかに無申告加算税がかかります。税務署からの調査の事前通知の前に自主的に期限後申告をした場合でも、納付すべき税金に5パーセントを掛けた額が加わります。法定申告期限から1か月以内に自主的に申告し、税金を期限内に納めているなど一定の要件を満たせば、かからない場合もあります。

住民税と予定納税

個人住民税の所得割は、前年の1月1日から12月31日までの所得をもとに計算されます。売却した年の所得は、翌年の申告を経て、その年度の住民税に反映されます。所得税を納めた後にもう一度まとまった支払いが来ることを、資金繰りの中に入れておいてください。

翌年の予定納税は、前年分の税額をもとに計算されますが、譲渡所得などは「除外所得」として、なかったものとみなして計算されます。売却益が大きかった年の翌年に、その売却益まで前払いを求められるわけではありません。家賃収入がなくなったのに前年の不動産所得を基準に予定納税の通知が届いたときは、通知の内容を税務署に確認します。

賃貸をやめるときの届出

売却で賃貸の事業そのものをやめる場合は、個人事業の開業・廃業等届出書を、廃止した日の属する年分の確定申告期限までに提出します。青色申告をしていた方は青色申告の取りやめ届出書を、消費税の課税事業者で他に課税売上げがない方は事業廃止届出書も出すよう案内されています。複数の物件のうち一部だけを売り、賃貸を続ける場合は廃業には当たりません。

売却前から申告までの準備

売却した年の申告は、翌年2月に始めるよりも、売る前から書類をそろえておくほうが手戻りが少なくなります。時期ごとに、やっておきたいことを並べます。

売却の全体の流れや、売る前に準備しておく書類は、福岡市の不動産売却ガイドでもまとめています。手元にいくら残るかを売却前に考えるときは、一棟アパート売却で税引後の手残りを増やす考え方もあわせてご覧ください。

よくあるご質問

収益物件を売却したら、確定申告はいつすればよいですか?
売却した年の翌年2月16日から3月15日までに申告し、3月15日までに納付します。売却した年は、譲渡所得の内訳書と申告書第三表を加えて、家賃の不動産所得と一緒に申告します。

売却した年の家賃収入も申告が必要ですか?
必要です。1月1日から引渡し日までに受け取るべき家賃は、売主の不動産所得です。引渡し日以降の分は買主の収入になるため、精算書で区切りの日と金額を確認してから収支をまとめます。

固定資産税の精算金はどこに書けばよいですか?
譲渡所得の内訳書の譲渡価額に含めて書きます。引渡し日から年末までの固定資産税・都市計画税に相当する額を買主から受け取った場合、その額は譲渡価額に算入します。売主が納めた固定資産税そのものは、不動産所得の必要経費です。

購入時の契約書が見つからない場合はどうなりますか?
取得費が分からない場合は、売った金額の5パーセント相当額を取得費にできます。ただし実際の取得費のほうが大きい場合もあるため、通帳やローン契約書など購入代金を裏づける資料がないかを先に確認してください。

売却して損が出た場合、給与や家賃の所得と相殺できますか?
できません。土地や建物の譲渡損失は、同じ年の他の土地や建物の譲渡所得からは差し引けますが、給与所得や不動産所得など他の所得とは損益通算できません。繰越控除が認められるのは、要件を満たす居住用財産の場合に限られます。

12月に契約して翌年1月に引き渡した場合、どちらの年に申告しますか?
原則は引き渡した年ですが、契約の効力が生じた年(一般的には契約を結んだ年)の譲渡として申告することもできます。どちらの年にするかで長期・短期の判定が変わる場合があるため、所有期間を確かめたうえで選んでください。

出典(2026年9月26日確認)

2026年9月26日時点の法令と国税庁の公表資料に基づいて作成しています。令和8年分の申告の手引きが公表された際は、様式や記載方法に変更がないかをご確認ください。個別の税額の計算、減価償却の扱いの選択、申告書の作成は税理士にご確認ください。物件の売却価格や売却の時期の考え方については、資料を拝見したうえでご説明します。

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監修 — 井口 忠二
株式会社アスパートナー 代表取締役 / 相続対策専門士・公認不動産コンサルティングマスター

明治大学商学部卒業、グロービス経営大学院修了(MBA)。大手不動産会社で東京23区トップセールス2年連続受賞。2017年アスパートナー設立。取引実績120億円超・成約800件超。福岡市7区に特化した投資用不動産・相続対策の専門家。

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