契約不適合責任と告知|引渡し後に売主が負うものと期間
- 契約不適合責任とは、引き渡した目的物が種類・品質・数量に関して契約の内容に適合しないときに売主が負う責任です。
- 買主が求められるのは、履行の追完(修補など)、代金の減額、損害賠償、契約の解除の4つです。
- 買主は不適合を知った時から1年以内に通知しなければ、これらを請求できなくなります。
- 免責の特約をしても、知りながら告げなかった事実については責任を免れません。隠して売るという選択肢は、法律上ありません。
- 宅建業者が自ら売主となる場合は、引渡しの日から2年以上とする特約を除き、買主に不利な特約はできず、反する特約は無効です。
契約不適合責任とは、引き渡した不動産が契約の内容に適合していなかった場合に、売主が負う責任をいいます。売却は引き渡して終わりではなく、その後に請求を受ける可能性があります。そして、この責任を軽くする最も確実な方法は、隠さないことです。本記事では、買主が何を求められるのか、期間はどうなっているのか、売主として何をしておくべきかを整理します。なお本記事は一般的な説明であり、個別の判断は弁護士にご確認ください。
何が「不適合」にあたるのか
民法では、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき、買主は売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができます。
基準は「契約の内容」です。良いか悪いかではなく、契約で前提とされていた状態と違うかどうかで判断されます。ここが実務上とても重要です。
築40年の建物を築40年として売ったなら、相応の傷みは契約の内容に織り込まれています。逆に、問題がないものとして売った物件に問題があれば、不適合になり得ます。つまり、物件の状態そのものより、何をどう説明して売ったかが効いてきます。
なお、その不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は追完の請求をすることができません。
買主が求められる4つのこと
条文が定めている手段を順に見ます。
| 手段 | 内容 |
|---|---|
| 履行の追完 | 修補、代替物の引渡し、不足分の引渡し |
| 代金の減額 | 相当の期間を定めた催告後、追完がないとき |
| 損害賠償 | 追完・減額とあわせて行使できる |
| 契約の解除 | 同上 |
代金の減額は、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときに、不適合の程度に応じて請求できます。ただし、履行の追完が不能であるときなどは、催告なしに直ちに減額を請求できます。
そして、これらの規定は損害賠償の請求および解除権の行使を妨げません。不適合の内容によっては、解除まで進む可能性があるということです。
通知の期間は1年。ただし例外があります
種類または品質に関する不適合について、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、追完の請求・代金の減額の請求・損害賠償の請求および契約の解除をすることができません。
起算点は「引渡しの時」ではなく「不適合を知った時」です。引き渡して数年が経ってから見つかった不適合でも、知った時から1年以内に通知されれば対象になり得ます。
ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この1年の制限は適用されません。知っていた売主は、期間の経過で守られないということです。
実務では、契約でこの期間を短くすることがあります。個人が売主の場合、たとえば引渡しから3か月といった定めを置くことが多く見られます。ただし、次に述べる例外は特約では覆せません。
なお、通知は「不適合がある」という事実を知らせるもので、その時点で損害額まで確定している必要はないと解されています。買主から連絡が入ったら、まず事実関係を確認してください。感情的に突き返すと、話が訴訟へ向かいます。多くの場合、修繕の費用をどちらがどこまで負担するかという交渉で収まります。
免責特約をしても、隠した事実は免れません
免責の特約についても、民法に定めがあります。
売主は、引き渡した物件の種類・品質・数量が契約の内容に適合しない場合や、移転した権利が契約の内容に適合しない場合の担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実と、自ら第三者のために設定し、または第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができません。
つまり、契約書に「売主は契約不適合責任を負わない」と書いてあっても、知っていながら伝えなかったことについては、その特約は効きません。
ここが売主にとって最も重要な部分です。免責特約は「知らなかったこと」を守るための仕組みであって、隠すための道具ではありません。
雨漏りの履歴、設備の不具合、過去のトラブル、近隣との経緯。知っていることは、伝えたほうが結果的に安全です。伝えたうえで価格に反映するほうが、後から争いになるより損失が小さくなります。
実際、開示によって価格が大きく下がるとは限りません。買主が恐れるのは不具合そのものより、後から何が出てくるか分からないという不確実性です。修繕の見積もりまで添えて示せば、買主はその金額を引いて判断できます。数字が確定すれば、そこで交渉は終わります。
逆に、伝えずに売って後から請求を受けた場合、失うのは金銭だけではありません。解除まで進めば取引そのものがなくなり、受け取った代金を返したうえで、次の買主をもう一度探すことになります。その間の時間と費用も戻りません。
相手が宅建業者か、業者から買うかで変わります
宅建業法では、宅地建物取引業者が自ら売主となる売買契約について、契約不適合を担保すべき責任に関し、民法に規定する通知の期間について引渡しの日から2年以上となる特約をする場合を除き、民法に規定するものより買主に不利となる特約をしてはならないとされています。そして、これに反する特約は無効です。
整理すると、こうなります。
| 売主 | 買主 | 期間の扱い |
|---|---|---|
| 個人 | 個人 | 特約で短くすることが可能(3か月などの例が多い) |
| 宅建業者 | 業者でない者 | 引渡しから2年以上。これより不利な特約は無効 |
| 個人 | 宅建業者 | 宅建業法の上記の規定の適用はない |
ご自身が個人として売る場合、宅建業法のこの規定は適用されません。ただし免責特約の制限は当事者を問わず働きます。知りながら告げなかった事実については、誰が売主でも責任を負います。
なお、買主が不動産会社(いわゆる買取)の場合は、契約不適合責任を免除する形で進めることが一般的です。スピードと確実性を重視するなら選択肢になります。仲介と買取の違いは買取価格の根拠で整理しています。
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収益物件で問題になりやすいこと
収益物件は、建物そのものだけでなく賃貸借の状態も契約の内容に含まれます。ここが居住用との違いです。
- レントロールに記載した賃料と、実際の契約書の賃料が違った
- 入居中としていた部屋が、引渡し時には退去していた
- 滞納の事実を伝えていなかった
- 入居者と個別に交わした覚書(賃料の減額など)を引き継がなかった
- 預かっている敷金の額が、契約書と一致していなかった
いずれも、買主にとっては収益の前提が崩れる話です。物理的な不具合より、こちらのほうが金額への影響が大きくなることもあります。賃料が月1万円違えば、利回りで逆算した価格は数百万円単位で動きます。
対策は単純で、資料を実態と合わせておくことに尽きます。レントロールと賃貸借契約書、入金の記録を突き合わせ、食い違いがあれば売る前に整理してください。整え方はレントロール整理術、敷金の扱いは原状回復と敷金の扱いで解説しています。
建物状況調査という選択肢
建物の状態について、第三者に調べてもらう方法があります。既存の建物を売買するとき、媒介契約の書面には建物状況調査を実施する者のあっせんに関する事項を記載することとされています。
この調査は、建物の構造耐力上主要な部分や、雨水の浸入を防止する部分の状況を、一定の知識と能力を有する者が調べるものです。制度として、売買の前に建物の状態を確認する仕組みが用意されているということです。
売主の立場から見た意味は2つあります。ひとつは、知らなかった不具合を事前に把握できること。知らないまま売れば1年の通知期間の制限に守られる場面もありますが、後から発覚すれば交渉は揉めます。先に分かっていれば、価格に織り込むか、直してから売るかを選べます。
もうひとつは、買主に対する説得力です。第三者が調べた結果を示せれば、買主は保守的な見積もりをする必要がなくなります。何も資料がない物件ほど、買主は「分からない分を安く見る」という判断をします。
もっとも、調査には費用がかかり、すべての物件で必要というわけでもありません。建物の築年と、想定される買主の層で判断してください。事業者が解体を前提に買う物件なら、建物の調査に意味は薄くなります。
売る前にやっておくこと
この責任は、売った後に対処するものではありません。売る前の準備でほぼ決まります。
| やること | 効果 |
|---|---|
| 知っている不具合を書き出す | 告知の漏れを防ぐ。免責特約が効かないリスクを消せる |
| 修繕の履歴を整理する | 何を直し、何が未対応かを示せる |
| 賃貸借の資料を実態と合わせる | 収益の前提についての不適合を防げる |
| 境界と越境の状況を確認する | 数量・権利に関する不適合を防げる |
| 告知した内容を書面に残す | 「聞いていない」と言われたときの備えになる |
最後の項目が抜けやすい部分です。口頭で伝えただけでは、後から水掛け論になります。告知書という形で書面にし、買主の確認を得ておいてください。境界については売却前の境界と測量で整理しています。
分からないことは「分からない」と書く
相続で引き継いだ物件では、過去の経緯が分からないことがあります。そうした場合に、推測で「問題ありません」と書くのは避けてください。
分からないものは、分からないと書く。これは不誠実ではなく、正確な開示です。買主はその前提で判断し、価格にも反映されます。逆に「問題ない」と書いて後から出てくるほうが、はるかに重い結果を招きます。
売却の全体的な進め方は福岡市の不動産売却ガイド、契約の入口である媒介契約は媒介契約の選び方をご覧ください。
よくあるご質問
- e-Gov法令検索 民法(第562条・第563条・第564条・第566条・第572条、第415条・第541条・第542条)
- e-Gov法令検索 宅地建物取引業法(第40条、第34条の2第1項第4号)
2026年9月18日時点の内容です。個別の契約条項と責任の範囲については、契約前に弁護士および仲介会社へご確認ください。
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