貸家建付地の賃貸割合とは|評価額の計算式と空室の扱い
- 賃貸割合は「賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 各独立部分の床面積の合計」で計算します。戸数ではなく床面積です。
- 貸家建付地の評価額は、自用地としての価額から「自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合」を差し引いて求めます。
- 空室があると賃貸割合が下がり、評価減の幅も小さくなります。ただし一時的な空室にすぎないと認められる場合は、賃貸されていたものとして扱って差し支えないとされています。
- その判定には4つの事実関係が挙げられています。募集の記録を残しておくことが、実務上の備えになります。
賃貸割合とは、賃貸されている各独立部分の床面積が、その建物の各独立部分の床面積の合計に占める割合のことです。アパートの敷地は貸家建付地として評価され、自用地より低く算定されますが、その減額の幅はこの賃貸割合によって変わります。名前のとおり賃貸されている割合ですが、何を分母に置くのか、空室をどう扱うのかで結果が変わります。本記事では、計算の仕方と空室の扱いを整理します。個別の評価は税理士にご確認ください。
賃貸割合はどこで効くのか
はじめに、賃貸割合が式のどこに入るのかを確認します。貸家建付地の価額は、次の算式で評価します。
貸家建付地の価額 = 自用地としての価額 - 自用地としての価額 × 借地権割合 × 借家権割合 × 賃貸割合
差し引かれる部分に賃貸割合が掛かっています。つまり賃貸割合が下がるほど、差し引ける金額も小さくなるという関係です。満室であれば賃貸割合は1となり、減額の幅は最大になります。
借地権割合と借家権割合は、路線価図・評価倍率表で確認できます。この2つは地域ごとに定まっているため、オーナーの側で動かせるものではありません。賃貸割合だけが、日々の運営の結果として変わる数字です。貸家建付地そのものの仕組みは貸家建付地とは|評価額の計算式・賃貸割合・貸宅地との違いで解説しています。
計算は床面積で行う
賃貸割合は、次の算式で計算します。
賃貸割合 = Aのうち課税時期において賃貸されている各独立部分の床面積の合計 ÷ 当該家屋の各独立部分の床面積の合計(A)
ここで間違えやすいのが、戸数ではなく床面積で計算する点です。10戸のうち8戸が入居していても、空いている2戸が広い部屋であれば、賃貸割合は8割になりません。
| 部屋 | 床面積 | 状況 |
|---|---|---|
| 1階 101〜104号(各25㎡) | 100㎡ | すべて入居 |
| 2階 201〜204号(各25㎡) | 100㎡ | すべて入居 |
| 3階 301・302号(各50㎡) | 100㎡ | 2戸とも空室 |
| 合計 | 300㎡ | 賃貸中 200㎡ |
この例では、10戸のうち8戸が入居していますが、賃貸割合は 200㎡ ÷ 300㎡ で約0.67です。戸数で数えれば0.8ですから、広い部屋が空くほど評価への影響は大きくなります。
逆に、ワンルームが多い建物で広めの部屋が埋まっていれば、戸数で見るより賃貸割合は高くなります。間取りにばらつきのある建物ほど、戸数と面積の差が開くということです。同じ「8戸入居」でも、どの部屋が空いているかで結果は変わります。
また、分子に入るのは「課税時期において賃貸されている」部分です。課税時期とは、相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日を指します。その一日時点の状況が基準になるため、前後の入退去のタイミングによって数字が動きます。
「各独立部分」の意味
分母となる「各独立部分」にも定義があります。建物の構成部分である隔壁、扉、階層(天井および床)等によって他の部分と完全に遮断されている部分で、独立した出入口を有するなど独立して賃貸その他の用に供することができるものをいいます。
アパートの各住戸は通常これに当たります。一方、共用の廊下や階段、エントランスは各独立部分ではないため、床面積の集計に含めません。建物全体の延床面積をそのまま分母に置くと、計算がずれます。
なお、貸家建付地の評価の対象となるのは、借家権の目的となっている家屋の敷地です。一般的に借地借家法の適用がないとされている社宅の敷地は、貸家建付地の評価を行わず自用地としての価額で評価するとされています。従業員に貸していれば当然に評価減、とはならない点にご注意ください。
注意:令和6年1月1日以後に相続・遺贈・贈与により取得した「居住用の区分所有財産」(いわゆる分譲マンション)は、評価方法が別に定められています。一棟のアパートと区分所有のマンションでは扱いが異なるため、どちらに当たるのかを先に確認してください。
評価と売却、両方の数字を並べてご説明します。
相続した収益物件について、評価の考え方と、売却した場合の手残りを一枚に整理します。判定に関わる部分は提携税理士と確認しながら進めます。ご相談は無料です。
一時的な空室の扱い
ここが実務で最も問われる部分です。課税時期にたまたま空いていた部屋まで賃貸割合から外れると、実態と合わない評価になります。そこで、継続的に賃貸されていたアパート等の各独立部分について、一時的に空室となっていたにすぎないと認められるものは、課税時期においても賃貸されていたものとして取り扱って差し支えないとされています。
その判定にあたって挙げられているのが、次の4つの事実関係です。
| 要件 | 内容 | 残しておきたい資料 |
|---|---|---|
| イ | 各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものであること | 過去の賃貸借契約書、入金記録 |
| ロ | 賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われ、空室の期間中、他の用途に供されていないこと | 募集の依頼書、広告の掲載記録 |
| ハ | 空室の期間が、課税時期の前後の例えば1か月程度であるなど、一時的な期間であること | 退去日・入居日のわかる書類 |
| ニ | 課税時期後の賃貸が一時的なものではないこと | 新しい賃貸借契約書 |
4つを見ると、共通しているのは「貸す意思を持って動いていたことを示せるか」です。とくにロとハは、募集の記録が残っていなければ主張しにくくなります。
ハに「例えば1か月程度」とあるとおり、期間の長さも見られます。ただし、これは一つの目安として示されているもので、期間だけで機械的に決まるわけではありません。イからニまでの事実関係を総合して判断されるため、募集を続けていた経緯を説明できる状態にしておくことが実務上の要点になります。
逆に、退去後に募集をかけず放置していた部屋、物置として使っていた部屋は、この扱いから外れます。空室を空室のままにしておくことは、評価の面でも不利に働くということです。空室の判断は収益物件の空室をどう判断するかで整理しています。
建物の評価にも影響する
賃貸割合が効くのは土地だけではありません。貸家、つまり賃貸している建物そのものの評価についても算式が定められており、賃貸の状況が反映されます。
つまりひとつの空室が、土地と建物の両方の評価に関わってくるということです。アパート1棟を相続する場面では、この2つを合わせて考える必要があります。具体的な計算は税理士にご確認ください。
ここでも、一時的な空室と認められるかどうかが分かれ目になります。判定のために示す資料は、土地の評価で使うものと共通です。一度揃えておけば、両方の場面で使えます。
なお、賃貸割合を高く保つことは、相続税評価だけの話ではありません。稼働している物件は、売却時にも収益物件として評価されやすくなります。空室が続いている物件の売却は空室がある一棟アパートは売却できるかで整理しています。
オーナーとして備えること
評価は相続が起きた時点の状況で決まりますが、その時点で慌てても記録は作れません。備えとしてできることを整理します。
1つ目は、募集の記録を残すことです。管理会社に委託している場合でも、いつ募集を依頼し、どこに広告を出したのかがわかる書類を保管しておきます。メールのやりとりでも構いません。募集の開始日と、掲載していた条件がわかる形にしておくと確実です。
2つ目は、各住戸の床面積を一覧にしておくことです。竣工図や建築確認の書類から、住戸ごとの床面積を拾い出しておきます。賃貸割合の計算に直接使う数字で、いざというときに図面から拾い直す手間がなくなります。
3つ目は、退去と入居の日付を管理することです。空室期間が一時的だったと示すには、退去日と次の入居日が必要になります。表計算でも手書きでも、日付が追える形であれば十分です。レントロールの整え方はレントロール整理術をご覧ください。
これらは相続対策のためだけの作業ではありません。売却するときに買主が求める資料と、ほぼ同じものです。どちらの道を選んでも無駄になりません。相談前に整える資料は税理士に相談する前に整える資料で整理しています。
保有と売却、どちらが有利かを数字でお出しします。
評価額と、売却した場合の手残りを並べて比較できる形にしてお渡しします。査定は無料で、ご依頼から3〜5営業日でご提示します。代表・井口が直接対応します。
よくある誤解
最後に、実際のご相談の場で見かける誤解を整理しておきます。
ひとつは、「空室があると評価減がまったく使えない」という思い込みです。使えなくなるのではなく、賃貸割合の分だけ減額の幅が小さくなります。一時的な空室と認められれば、その部分は賃貸されていたものとして扱えます。
もうひとつは、「評価が下がるほど得だから、満室にしないほうがよい」という逆向きの誤解です。賃貸割合が高いほど評価減は大きくなりますから、満室のほうが評価上も有利です。しかも家賃収入が増えます。評価と収益は、この点では同じ方向を向いています。
三つ目は、賃貸割合を戸数で計算してしまうことです。前述のとおり床面積で計算します。間取りにばらつきのある建物では、結果が大きく変わります。
四つ目は、「相続が起きてから対策すればよい」という考え方です。賃貸割合は課税時期の状況で決まり、一時的な空室と認められるかどうかは、それまでの募集の経緯で判断されます。相続が起きた後から記録を作ることはできません。備えは、日々の運営の記録を残すことそのものです。
なお、評価の話と、その物件を持ち続けるかどうかの判断は別のものです。評価が下がることと、収益が上がることは同じではありません。空室が続いて手残りが減っている物件であれば、評価の有利さより先に、経営として成り立っているかを確かめる必要があります。判断の軸は親から引き継いだアパート経営を整理する判断軸で整理しています。
よくあるご質問
- 国税庁 No.4614 貸家建付地の評価(根拠法令等:評基通25、26)
- 国税庁 No.4667 居住用の区分所有財産の評価
- 国税庁 財産評価基本通達93(貸家の評価)
- 国税庁 財産評価基準書「路線価図・評価倍率表」(借地権割合・借家権割合)
本記事は2026年9月4日時点の一般的な説明です。個別の評価・判定は税理士にご確認ください。
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