空室率が高いアパートを売る時の価格の見方と対策
- 空室率が高いアパートは、収益価格が大きく下がります。収益価格は「実際の家賃 ÷ 利回り」で決まるため、空室が増えるほど価格に直接響きます。
- 空室率30%なら、収益価格は満室時の約7割まで下がる計算です。さらに買主は「なぜ埋まらないのか」と不安を感じ、二重に評価が下がりがちです。
- 対策の基本は「埋めてから売る」。少ない費用で空室を埋められるなら、収益価格の回復額は費用を大きく上回ることが多く、効果的です。
- 埋めるのが難しい場合は、現況のまま売る・買取・土地値で売るという選択肢を、手残りで比べて選びます。
「空室が多いアパートは、いくらで売れるのか」——空室に悩むオーナーが最も気にする点です。空室率が高い物件は、満室の物件より価格が下がります。ただし、その下がり方には仕組みがあり、対策次第で価格を回復させることもできます。本記事では、空室率が高いアパートを売るときの価格の見方と、価格を少しでも上げるための対策を整理します。空室の仕組みを理解すれば、闇雲に値下げする前に打てる手が見えてきます。なお本記事の数値は考え方を示すための例示であり、個別の判断・税額は専門家にご確認ください。
空室率が高いと収益価格はどう下がるか
収益物件の価格は、収益価格(実際に入っている家賃を利回りで割り戻した価格)で決まります。買主が見るのは満室想定の家賃ではなく、今実際に入っている家賃です。そのため、空室が増えるほど家賃収入が減り、収益価格が直接下がります。
| 空室率 | 年間家賃(満室600万の例) | 収益価格(利回り7%) | 満室比 |
|---|---|---|---|
| 満室 | 600万円 | 約8,570万円 | 100% |
| 10% | 540万円 | 約7,710万円 | 90% |
| 20% | 480万円 | 約6,860万円 | 80% |
| 30% | 420万円 | 約6,000万円 | 70% |
この例では、空室率が30%になると、収益価格は満室時の約7割(約6,000万円)まで下がります。空室が1割増えるごとに、収益価格は満室時のおよそ1割ずつ削られていくイメージです。空室が家賃収入を減らし、それが利回りで割り戻されて価格に大きく響くためです。10戸のうち3戸が空いているだけで、価格は2,500万円以上下がる計算になります。収益価格の考え方は表面利回りと実質ROAの違いで詳しく解説しています。
この仕組みを理解しておくと、逆に「空室を減らせば価格が大きく戻る」ことも見えてきます。空室が価格を下げるのと同じ力で、空室を埋めれば価格は回復します。つまり、空室率の高い物件は「価格が下がりきった不利な物件」であると同時に、「埋めれば価格が伸びる余地の大きい物件」でもあります。この両面を理解したうえで、埋める努力に見合う物件かどうかを見極めることが、空室物件を有利に売る出発点になります。
買主は空室物件を二重に割り引く
実は、空室率が高い物件の評価は、収益価格の計算以上に下がることがあります。買主は、家賃収入が減っている事実に加えて、「なぜこの物件は空室が埋まらないのか」という不安を感じるためです。立地が悪いのか、建物に問題があるのか、管理が良くないのか——原因が分からないと、買主は「見えないリスクがある」と考え、保守的に、つまり低めに評価します。
つまり、空室物件は「収益が減っている分」と「不安による割引」の二重で評価が下がりがちです。とくに経験の浅い買主ほど、空室の多さそのものを警戒し、大きく割り引いて考える傾向があります。逆にいえば、空室の原因を説明でき、対策の見通しを示せれば、この二重目の割引を減らせます。「駅から遠いが賃料を下げれば埋まる」「設備が古いので更新すれば決まる」といった具体的な見通しがあれば、買主の不安は和らぎます。空室物件の見極めは収益物件・空室の見極めも参考になります。
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まず空室の原因を切り分ける
対策を選ぶ前に、なぜ空室が埋まらないのかを見極めることが欠かせません。原因によって、打つべき手も、売り方の選択も変わるためです。
空室の原因は大きく3つに分けられます。第一に賃料。相場より高いまま据え置いていれば、賃料を見直すだけで埋まることがあります。この場合は対策の効果が読みやすく、埋めてから売る価値が高いといえます。第二に設備・建物の状態。設備の古さや不具合が敬遠の原因なら、原状回復や設備更新で改善できますが、費用と効果を見比べる必要があります。第三に立地・需要。そもそもエリアの賃貸需要が弱い場合は、賃料や設備を変えても埋まりにくく、現況で売る・買取・土地値といった別の出口を検討します。原因を切り分けることで、「埋める努力が報われるか」が見えてきます。空室の見極め方は収益物件・空室の見極めで詳しく扱っています。
対策A:埋めてから売る
空室率が高い物件の価格を上げる最も効果的な対策は、売却前に空室を埋めることです。収益価格は家賃で決まるため、空室が埋まれば価格は回復します。そして多くの場合、空室を埋める費用より、収益価格の回復額のほうがはるかに大きくなります。
先の例で、3戸の空室を1戸あたり50万円(原状回復・募集費用)、合計150万円で埋めて満室にできたとします。すると収益価格は約6,000万円から約8,570万円へ、約2,570万円回復します。150万円の費用で2,500万円以上の価格回復が見込めるなら、埋めてから売る価値は十分にあります。この差の大きさは、収益価格が「家賃を利回りで割り戻す」計算で決まることから生まれます。家賃が少し増えるだけで、それが利回りで割り戻されて価格に大きく反映されるためです。だからこそ、空室物件は「埋める手間をかける価値が最も大きい物件」ともいえます。ただし、募集に時間がかかる、賃料を大きく下げないと決まらない、といった場合は効果が薄れるため、埋めるコストと回復額を見比べて判断します。修繕して価値を上げる考え方は修繕前と修繕後どちらで売るべきか、満室で売る意味は満室アパートを売るタイミングで扱っています。
対策B:埋めずに売る選択肢
空室を埋めるのが難しい場合は、現況のまま売る方法を選びます。埋めずに売る場合の選択肢を整理します。
| 売り方 | 内容 | 向くケース |
|---|---|---|
| 現況のまま仲介 | 空室のまま投資家に売る | 空室を埋める見通しを示せる |
| 買取 | 業者が現況のまま買う | 早く・手間なく手放したい |
| 土地値で売る | 建物より土地の価値で売る | 築古で収益価格が土地値を下回る |
空室が多くても、買主自身が「自分なら埋められる」と考える投資家(リフォームや客付けに強い層)に売れば、現況のまま買い手が付くこともあります。こうした投資家は、むしろ空室を「自分の腕で価値を上げられる余地」と捉えるため、一般の買主とは違う評価をしてくれます。早く手放したいなら買取、築古で収益価格が土地値を下回るなら土地としての価値で売る、という選択もあります。買取の価格の見方は買取業者に売る前に確認したい価格の根拠、土地値での売却は土地値に近い築古アパートを売る時の考え方で詳しく解説しています。
現況で売る場合の見せ方も大切です。空室を「弱み」として隠すのではなく、「これだけの伸びしろがある」と前向きに示すことで、買主の受け止め方は変わります。たとえば「賃料を相場に合わせれば埋まる見込み」「近隣に競合が少ない」といった材料を添えれば、買主は空室を将来の収益余地として捉えられます。空室物件を買う投資家は、埋めた後の収益を見込んで購入するため、その見込みを立てやすくする情報提供が、現況売却では効いてきます。
注意:空室を埋めるために、相場より大幅に安い賃料で無理に入居者を入れると、かえって収益価格が下がることがあります。買主は入居中の実際の賃料で採算を見るため、安すぎる賃料は将来の収入減として織り込まれます。「空室を埋める」ことと「適正な賃料で埋める」ことは別物です。埋めること自体を目的にせず、収益価格が上がる形で埋めることを意識してください。焦って安値で埋めると、目先の空室は消えても、買主から見た収益力は下がったまま——ということになりかねません。
埋めてから売るか、現況で売るか。手残りで一緒に比べます。
空室を埋めるコストと収益価格の回復額、現況で売った場合の手残りを並べて、どちらが有利かを中立の立場でご説明します。ご相談だけでも構いません。
空室率別・取るべき戦略
空室率の水準によって、取るべき戦略は変わります。目安を整理します。第一に、空室率が低〜中程度(1〜2割)なら、埋めてから売るのが基本です。少ない費用で満室に近づけられれば、収益価格の回復効果が大きいためです。第二に、空室率が高い(3割以上)なら、埋めるコストと期間を慎重に見極めます。全戸を埋めるのに時間と費用がかかりすぎるなら、現況で投資家に売る、または買取を選ぶほうが合理的なこともあります。埋める作業に半年や1年かかるくらいなら、その間の維持費や機会損失も踏まえて、現況で手放す判断が有利なケースもあります。第三に、築古で収益価格が土地値を下回るなら、土地としての価値で売る方向に切り替えます。この場合は、空室を埋める努力よりも、土地の価値を正しく評価してくれる買主を探すことが優先されます。
大切なのは、「空室を埋めてから売る」を唯一の正解と思い込まないことです。埋める効果が費用に見合うかを数字で確認し、見合わないなら別の売り方を選ぶ。空室率の高い物件だからこそ、複数の選択肢を手残りで比べて、最も有利な方法を選ぶことが重要です。空室に悩んでいると、つい「安くしないと売れない」と焦りがちですが、値下げは最後の手段です。まず原因を切り分け、埋める価値があるかを見極め、埋めないなら買主層や売り方を変える——この順序で考えれば、必要以上に安く手放さずに済みます。空室が多い物件の売り方全般は空室が多いアパートの売却もあわせてご覧ください。手取りの計算はアパート売却の手取り計算を参考にしてください。
よくあるご質問
出典本記事の収益価格の計算は考え方を示すための例示です。相場・利回りの水準は当社調べ(2026年版 福岡市7区エリアデータ:国土交通省 地価公示・SUUMO/HOME’S市場相場・福岡市公式統計をもとに整理)。個別物件の価格・税額は宅地建物取引士・税理士にご確認ください。
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